〈メモ〉アフガニスタンの国歌
アフガニスタンの国歌について少し調べたので書きます。
アフガニスタンについて
・国名は「アフガニスタン・イスラム共和国」。共和制。
・首都はカブール。
・多民族国家で、使用される言語も多様。
・パシュトー語とダリー語(アフガニスタンのペルシア語)の2つが公用語になっている。
・1996年にタリバン(イスラム原理主義組織)がカブールを制圧し、国の大半を支配していた(タリバン政権)。
・2001年にアメリカ同時多発テロ(飛行機が世界貿易センターに突っ込むやつ)が起きる。アメリカは事件の首謀者をイスラム過激派指導者のオサマ・ビン・ラディンと断定して、イギリスと共にビン・ラディンが潜伏するアフガニスタンへの攻撃を開始する。
・米英の攻撃によってアフガニスタンのタリバン政権は2001年に崩壊し、同年に暫定行政機構ができる。
・2004年に新憲法を制定。
国歌について
現在のアフガニスタン国歌は2006年から使用されているもので、たぶん6代目の国歌。歴代の国歌については全然調べてないので、いづれ機会があれば調べたい。この記事では、現行の6代目(たぶん)の国歌について書いていきます。
アフガニスタンの国歌については、以前にも記事を書いています。
こっちの記事のほうに動画と原文歌詞(パシュトー語)と英訳と私の和訳が載ってるので、この記事では省略します。和訳歌詞については、正確性を保証できないので参考程度にご覧ください。個人的にアフガニスタン国歌のメロディーはかっこよくて好きなので良かったら聴いてほしい。
さて、この国歌ですが、
①歌詞がパシュトー語で書かれている。
②歌詞でアフガニスタンの諸民族が列挙されている。
③歌詞の最後に「アッラーフ・アクバル(アッラーは偉大なり)」の言葉が出てくる。
という3つの特徴があります。
この3つの特徴は、アフガニスタンで2004年に制定された憲法の記述に則ったものらしいです。憲法第20条が、「国歌はパシュトー語で書かれ、アッラーフ・アクバルの言葉とアフガニスタンの諸民族に触れる」という内容になっています。
Article Twenty
Ch.1. Art. 20The National Anthem of Afghanistan shall be in Pashtu and mention “Allahu Akbar” and the names of the ethnic groups of Afghanistan.
(アフガニスタン憲法の非公式英訳が読めるこのサイトから引用)
この通り2004年の憲法に基づいてこの国歌は作成され、2006年に大統領とロヤ・ジルガによって承認されました。ロヤ・ジルガ(国民大会議)とは、国家の重要な事項を扱うアフガニスタンの伝統的な会議らしい。アフガニスタン大使館による解説を貼っておきます。
しかし、この国歌は憲法の記述に則って作られたものの当初は批判があったようです。
批判①歌詞がパシュトー語であることへの批判
最初に書いた通り、パシュトー語はアフガニスタンの公用語ですが、アフガニスタン国民みんながパシュトー語を話すというわけではないみたいです。それで、パシュトー語を話さない民族からの反発があった模様。
政治家からは国歌の歌詞をパシュトー語ではなく、もう一つの公用語であるダリー語にするべきという議論も出たようです。ダリー語は隣国イランなどで使われるペルシア語の仲間らしいですが、パシュトー語よりも話す人の割合が高く、多民族国家アフガニスタン内での共通言語のようにも使われるらしい。
参考までに、Wikipedia英語版のページにある表を貼っておきます。
国歌が制定された2006年のデータ(L1とL2が何なのかわからない)でもパシュトー語よりダリー語の使用割合が上ですけど、2013年と2018年のデータではダリー語は8割に迫る割合です。これを見ると確かにダリー語のほうがいいような気がする。そもそもなんで国歌がパシュトー語なのか分からないんですけどね。公用語が2言語あるから、カナダ国歌のようにパシュトー語歌詞とダリー語歌詞の2つのバージョンがあってもいいような...(カナダ国歌は英語歌詞とフランス語歌詞があり、こういう国歌はカナダ以外にもいくつかあります。)
また、歌詞をダリー語にすべきという意見の他に、歌詞を存在させずにメロディーだけの国歌にするという意見もあったようです。歌詞が存在しない国歌(つまりメロディーだけ)と言えばスペイン国歌が有名ですが、コソボ国歌のように歌詞の内容が特定の民族への態度の偏りみたいなのを生まないように、わざと歌詞が存在しない例もあります。多様な民族が暮らす国では、国歌の歌詞にも「どの民族に対しても平等な内容である」ことが求められるんですね。そういう時には、歌詞のない国歌を作るというのは有効な考えかもしれないです。
(たとえば南アフリカ共和国では、多様な言語が話されています。そんな南アフリカ国歌の歌詞は5つの言語で構成されていますが、公用語は11言語もあり、全ての公用語を国歌に含むことはできていない。)
批判②国歌の歌詞に載ってない民族がいる
「アフガニスタン国歌を和訳してみた」の記事を見たらわかると思いますが、この国歌の歌詞にはいろいろな民族が列挙されています。憲法の要求なので、その通りになっているわけです。しかし実際には載ってない小さな民族や人々がいるようです。たとえばシク教徒などが歌詞に含まれていないみたいですが、詳しくはよくわかりません。
批判③「アッラーフ・アクバル」が歌詞に含まれている
「アッラーフ・アクバル」は「アッラーは偉大なり」というイスラム教の言葉ですが、これは神聖な文句なので音楽に乗せるべきでないという意見です。アフガニスタンでイスラム教がどのように信仰されているのかわかりませんが(そもそもイスラム教について全然知らない)、ちょっと意外な意見でした。キリスト教だと聖歌とかすごい歌うイメージがあるし、宗教と音楽は結びつくものだと思ってたのですが、音楽に乗せるのはだらしないみたいな考えがあるんでしょうか。
このように、アフガニスタン国歌は批判があったようですが2006年に承認されて正式な国歌になっています。ところで私事ですが、今年の1月に国歌の輪プロジェクトという団体に誘われて、アフガニスタン大使館でのイベントに参加しました。
アフガニスタン建国100周年記念 第15回ワールドフードラリー ~アフガニスタン編~ | 国歌の輪プロジェクト~君が代などの国歌~
アフガニスタン大使館がすごく綺麗な建物で驚いたんですが、アフガンご飯も美味しくて、何より大使館の方やほかの参加者とアフガニスタン国歌を歌えたのは最高でした。
この時、大使館の方が仰っていた印象深い発言があります。
そういえば、大使館の方がアフガニスタンには多くの民族がいるという話をしている時に「中央アジアを楽しみたいと思ったらアフガニスタンに来れば十分!」って言ってたのが面白かったし、アフガニスタンの多様性を表すいい例えだと思った。
— もす (@mosukoke) January 25, 2019
アフガニスタン国歌の歌詞や、歌詞の言語問題を見ていてもそうでしたが、本当に多様な民族がいる国なんだなあという感じです。日本とは全く違う社会や歴史がありそうです。
ところで、このイベントを開催した国歌の輪プロジェクトでは次回のイベントとして11月にニカラグア大使館でのイベントを予定しています。私も参加する予定なんですが、国歌が好きな同志を増やしたいので詳細を貼っておきます。
アフガニスタン国歌についての参考サイト
アフガニスタン国歌についての調査は、ほぼこの2つのサイトを軽く読んだだけなんですが、英語ができないのでなんかちゃんと理解できてなさそうで怖い。間違いとかあったら教えてください...